昔、鶴岡八幡宮の前には角正という旅館がありました。
その角正にやってきたのが白髪を伸ばし、首の長い徳利(白鳥徳利)を持った老人。
老人は酒一升を買って帰りました。
持参した徳利に口きりいっぱいだったそうです。
次の日、またその老人がやってきます。
例の徳利を差し出して酒を一升五合注文します。
店の人が入るわけがないと思いながら、酒を注ぐと不思議な事に一升五合の酒が入ってしまいました。
さらに次の日は二升買って帰ります。
ただ者ではないと感じた店の人は、老人の後をつけてみました。
馬場小路を歩いて行く老人。
巨福呂坂入口の青梅聖天からは山を上り、扇ヶ谷に下りると、今度は仮粧坂を上って隠れ里の巌窟に入って行きました。
中の様子はわかりませんでしたが、しばらくすると大勢の楽しそうな声が聞こえてきました。
この話を聞いた人々は、福神が岩窟に集まって酒盛りをしていたのだと噂したのだとか・・・。
旅館角正
(『図説鎌倉年表』より)
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隠れ里・・・
世を避けて隠れ忍んで生活する人たちの里。
その里は、山奥や洞窟の奥などといった別天地にあって、争いもなく日々が平和で、庶民が求める理想郷であったのだとか。
鎌倉にも隠れ里がありました。
そこが佐助ヶ谷。
そんな隠れ里の神が源頼朝の夢の中に現れます。
その一人が宇賀神。
頼朝は宇賀神に隠れ里の霊水に祈るように告げられ、その霊水を見つけて宇賀神を祀ったのだといいます。
それが銭洗弁財天宇賀福神社。
もう一人、頼朝の夢の中に現れた隠れ里の神がいます。
それは、稲荷神(宇迦御魂命)。
頼朝が伊豆の流人だった頃のこと。
頼朝は稲荷神に挙兵するよう告げられ、そのとおり挙兵した頼朝は、見事に鎌倉に武家政権を樹立しました。
のちに隠れ里で稲荷の祠を発見した頼朝は、畠山重忠に命じて社殿を建立したのだそうです。
それが佐助稲荷神社。
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