英勝寺のある地は道灌の屋敷跡といわれています。
七重八重花は咲けども山吹のみ(実)のひとつだになきぞかなしき
後醍醐天皇の第十六皇子兼明親王が詠んだ歌です。
雨が降った日に来客があって、帰りがけに「蓑を借りたい」といわれたので、山吹の枝を持たせると、客は訳が分からず帰っていきました。
後日、山吹の意味を問われたのでこの歌を送ったということです。
歌の意味は、「山吹の花は八重七重に咲くのに実が結ばない」ということですが、裏を返すと「お貸しする蓑一つなくて申し訳ない」ということなのだそうです。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ある時、太田道灌は鷹狩りに出掛けました。
雨に降られたので、農家に立ち寄って蓑を借りようとしたところ、少女に山吹の花を差し出されたそうです。
怒った道灌はそのまま雨の中を帰ったのだといいます。
その夜、道灌は家臣にそのことを話しました。
すると、家臣は、兼明親王の古歌に山吹を詠んだものがあることを話したといいます。
その時はじめて、少女の差し出した山吹が「貧しくてお貸しする蓑もない」という意味であったことを知りました。
教養のなさを恥じた道灌は、その後学問に励んだのだそうです。
この故事に因んで英勝寺の仏殿の横には、山吹が植えられています。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
(英勝寺)