「武家の古都・鎌倉」
イコモスの評価結果及び勧告の概要
顕著な普遍的価値について |
推薦書の説明は十分に包括的であり、鎌倉の歴史的な重要性は十分に説明されているが、現在の資産の状況は、連続した有形文化財として顕著な普遍的価値を有していることを証明できていない。すなわち、鎌倉の歴史的重要性が資産により十全な形で示されていない。 |
完全性及び真実性について |
「完全性の条件」は、社寺や切通しを除いて物証として十分満たされていな く、当該資産で提案されている顕著な普遍的価値が証明されていない。一方、「真実性の条件」は満たされている。 |
基準ⅲ)の適用について 「現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。」という基準について |
鎌倉の武家による政治と文化の伝統は疑いもなく、歴史上ユニークなものである。しかし、構成資産では精神的、文化的な側面については示されているものの、それ以外の要素については物的証拠が少ないか(史跡、防御的要素)、顕著さにおいて限定的なものか(武家館跡、港跡)、あるいはほとんど証拠がないもの(市街地、権力の証拠、生活の様子)である。よって、登録基準ⅲ)の適用について証明されていない。 |
基準ⅳ)の適用について 「歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、或いは景観を代表する顕著な見本である。」という基準について |
武家が鎌倉の地を選び、自然への働きかけによって防御性を高めたことは認められるが、それは鎌倉の価値の防御的側面を示すのみ(切通し等)であり、それだけで顕著な普遍的価値を有するとは言えない。一方で、社寺や庭園の景観は重要であるが、武家発祥の地としての国レベルの重要性のみが示されており、比較検討の観点から顕著な普遍的価値については証明されていない。よって基準ⅳ)の適用について証明されていない。 |
資産及び緩衝地帯の保全について |
資産の保全法策と範囲、及び緩衝地帯の範囲については問題なしとされたが、資産全体の視覚的完全性(visual integrity)の観点から資産の周辺が都市化されていることの影響は無視できない。 |
管理体制について |
管理の体制は十全であるが、これが実際に機能することを確かめる必要がある。 |
結論 |
現在の構成資産では、主張する価値のうち武家の精神的な側面は示されているが、防御的側面については部分的にのみ示されており、さらにその他の観点(都市計画、経済活動、人々の暮らし)についての証拠が欠けているという完全性の観点、及び比較検討の観点から、顕著な普遍的価値を証明できていない。 |
勧告 |
イコモスは、「武家の古都・鎌倉」(日本)について、「不記載(not be inscribed)」を勧告する。 |
世界文化遺産候補21の史跡 |
鎌倉手帳 |