その家系は藤原秀郷を祖とし、曾祖父の頃より「左衛門尉」であったことから「佐藤」を名乗るようになったとする説があります。
佐藤氏は、源頼朝に仕えた安達盛長や、源義経に仕えた佐藤継信・忠信兄弟が同族といわれています。
西行像
義清が誕生したのは、平清盛と同じ1118年(元永元年)。
鳥羽上皇の時代には、北面の武士として仕えています。
「北面」とは、白河法皇の時に院警固のための設置された制度で、弓馬の道に優れただけではなく、眉目秀麗で、詩歌管弦に堪能であることが条件されていました。
しかし、義清は、1140年(保延6年)、23歳で出家してしまいます。『西行物語』は、出家の原因を親友の佐藤範康の死と伝えているようです。
西行物語絵巻
出家を思い立ち娘を蹴落とす場面。
西行が出家した後、間もなく妻と娘も出家したそうです。
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『西行物語』によれば、
佐藤義清と佐藤範康は、御所で和歌を詠み、待賢門院に召されて美しい御衣を頂戴しました。
御所を退出した二人は、「明日は、きらびやかないでたちで出仕しよう」と約束して七条大路で別れます。
しかし、翌朝義清が範康の家に行くと門前で多くの人々が騒いでいます。
何事が起こったのかと問いただすと、「殿は今宵亡くなられた」と返ってきました。
「年月をいかで我が身をおくりけん昨日の人も今日は亡き身に」は、この時の実感を詠んだものだといわれています。
この事件を機に義清は出家に踏み切ったと伝えられています。
しかし・・・
『源平盛衰記』では、高貴な女性と逢い引きを繰り返すうちに、「逢うことが重なれば、やがて人の噂にものぼるであろう」と注意され、「失恋」したことが原因と伝えれているようです。
高貴な女性とは・・・待賢門院璋子である考えられているようです。
待賢門院像
待賢門院は、鳥羽天皇の中宮です。
(参考:保元の乱・・・武士の台頭)
藤原公実の娘で、兄の実能は徳大寺を建立したことから、徳大寺殿と呼ばれていました。
西行はその徳大寺殿の家人でした。
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さて・・・西行は、生涯で二度、奥州へ旅をしています。
一度目は、1144年(天養元年)頃とされていますが定かではありません。
しかし、二度目の旅は『吾妻鏡』にも記されているとおり、1186年(文治2年)のことでした。
『吾妻鏡』によると・・・
1186年(文治2年)8月15日、源頼朝は、東大寺再建に必要な砂金を勧進するため、奥州へ向かう途中だった西行に面会します。
頼朝は西行に和歌について尋ねますが、
「和歌を作るのは、花や月をみて深く感動したときに三十一文字が浮かんでくるだけで、特別な秘訣などはありません」
と答えたといいます。
西行の歌は、自らが頼朝に語ったように、深い感動がそのまま詠まれたものでした。
のちに後鳥羽上皇は西行について、「生得の歌人」と評し、「常人では及ぶことはできない」と語ったといいます。
頼朝は、弓馬のことについても尋ねています。
それに対し、
「弓馬のことは出家する前までは秀郷以来の家伝もありましたが、出家遁世してしまった今はみんな忘れてしまいました」
と答えたといいます。
それでも多少は弓馬について語ったようで、頼朝はそれを筆記させたそうです。
翌日正午頃、西行は御所を退出し、奥州への旅を続けます。
その時に頼朝から銀の猫を賜ったそうですが、御所の門前で遊ぶ子どもにあげてしまったといいます。
(参考:鶴岡八幡宮の放生会と流鏑馬)
1186年(文治2年)8月15日、鶴岡八幡宮に参拝した頼朝は、鳥居の辺りを徘徊している一人の老僧を見つけます。
それが西行でした。
『新編相模国風土記稿』では「西行橋」と紹介されています。
西行は、この橋の上で頼朝に声をかけられたのだといいます。
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藤沢の片瀬にも西行の伝説が残されています。
旧江の島道に建てられた道標の一つに、「西行もどり松」と刻まれたものがあります。
昔、見事な松があって、東国を訪れた西行が、「その枝振りの見事さに都が恋しくなり、都の方を見返って、枝を西にねじった」と言い伝えられています。
この伝説が、一回目の旅の時か、二回目の旅の時かは定かではありません。
「西行もどり松」の道標
江の島道標は、江戸時代に活躍した鍼師杉山検校が、目の不自由な人にも江の島参詣ができるようにと建てたもの。
参考:江の島参詣道(遊行寺~片瀬~江の島)
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1190年(文治6年)2月16日、漂白の歌人、西行は亡くなります。
ところが・・・2月15日も西行の忌日といわれているようです。
「願はくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月の頃」
西行の有名な歌ですが、「きさらぎ(2月)の望月(十五夜)の頃に死にたい」という思いが詠まれています。
この歌によって実際の命日から、1日繰り上げて15日を忌日としたそうです。
2月15日といえば釈迦が入滅した日です。