9月9日から東京国立博物館で「運慶 祈りの空間 ー 興福寺北円堂」が始まりました。
運慶は、1180年(治承4年)の南都焼討で灰燼に帰した東大寺や興福寺を目の当たりにした仏師。
東大寺の復興は後白河法皇の支援の下で俊乗坊重源が奔走し、興福寺の復興は九条兼実の異母弟・信円が中心となって進められました。
そして、失われた仏像の復興事業で活躍したのが慶派の仏師。
慶派は、康慶からはじまる奈良仏師の傍流ですが、東大寺・興福寺の復興事業で造仏界の中心に躍り出ます。
康慶は、1178年(治承2年)に後白河法皇の蓮華王院(三十三間堂)の五重塔の造仏を任され、僧綱位の法眼を得た仏師。
僧綱位とは、仏師が与えられた位階で、下から法橋・法眼・法印。
当時、奈良仏師で僧綱位を得ていたのは康慶だけだったのだといいます。
その康慶の子が南都の復興事業の中で仏像界に新風を吹き込んだ運慶。
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1195年(建久6年)、東大寺の大仏殿が落慶。
翌年、如意輪観音・虚空蔵菩薩と四天王像が造像されますが、担当したのは慶派仏師。
運慶は康慶とともに虚空蔵菩薩の大仏師を務め、増長天の大仏師も務めています。
この功績で運慶は法眼の位を得ています。
1203年(建仁3年)、東大寺の南大門が再建されます。
金剛力士像は運慶が一門を率いて造立しています。
この功績で運慶は僧綱の極位である法印となります。
そして・・・
南都焼討から20年経った1210年(承元4年)、興福寺の北円堂が再建されます。
その造仏を任されたのが運慶。
1212年(建暦2年)、運慶一門は本尊の弥勒如来坐像と両脇侍像、無著・世親立像、四天王立像を造立したのだといいます。
現在の脇侍像は室町時代のもののようですが・・・
「運慶 祈りの空間 ー 興福寺北円堂」では、現在も北円堂に安置されている弥勒如来坐像、無著・世親立像と、かつては北円堂に安置されていたという中金堂の四天王立像を展示され、鎌倉復興期の北円堂が再現されています。
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年代は定かではありませんが、運慶は京都の八条高倉に地蔵十輪院を建立しています。
六波羅蜜寺の運慶坐像は運慶の自作とされ、地蔵十輪院にあった地蔵菩薩坐像の脇段に置かれていたものなのだと伝えられています。
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「運慶 祈りの空間 興福寺北円堂」
【会期】
2025年9月9日~11月30日。
【開館時間】
9時30分~17時00分
【観覧料】
一般 1,700円
大学生 900円
高校生 600円
【休館日】
9月29日(月)、10月6日(月)、14日(火)、20日(月)、27日(月)、 11月4日(火)、10日(月)、17日(月)、25日(火)
入場者全員に北円堂の戸張をもとにデザインされた「運慶展オリジナルカード」が配布されます。
裏面のQRコードを読み取ると、興福寺の変遷と祈りを紹介する映像を視聴することができます。
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東大寺大仏殿にも運慶仏があった!
東大寺南大門の金剛力士像は運慶作!