別冊『中世歴史めぐりyoritomo-japan』




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2011年8月31日水曜日

母の哀訴に命を救われた山内首藤経俊~石橋山の戦い~

「山内首藤氏」は、藤原秀郷の後裔といわれ、資清の代で「首藤」を名乗ります。

その後、孫の俊通が相模国鎌倉郡山内荘を領して「山内」を名乗り、「山内首藤氏」と呼ばれるようになったといわれています。

「首藤」という氏は、資清が「主馬首」(しゅめのかみ)という役職にあったため、「主馬首」の「首」と、「藤原」の「藤」に由来しているといわれています。


首藤氏は、代々源氏に仕えてきた家で、俊通は源義朝に仕え、妻の山内尼頼朝の乳母を務めています。

1159年(平治元年)の平治の乱で、俊通は、子俊綱とともに義朝のものと参陣し討死しました。


「紫陽花寺」として知られる北鎌倉山ノ内の明月院は、俊通の菩提を弔うために、子経俊が建てた明月庵を前身としています。

「明月院やぐら」は、上杉憲方の墓として知られていますが、一説には、経俊が俊通の菩提を弔うために造った「やぐら」であるともいわれています。


経俊は、父俊通と兄俊綱が平治の乱で戦死したことにより、「山内首藤」を継ぐことになります。

ただ、代々源氏に仕えていながら、1180年(治承4年)の頼朝の挙兵には参じず、石橋山の戦いでは、大庭景親に味方して頼朝に弓を引いてしまいます。


『吾妻鏡』によれば・・・

頼朝は、挙兵に際して、安達盛長を遣わして経俊に参陣を呼びかけていますが、7月10日の盛長の報告は、

「相模国には従う者は多くいます。
しかし・・・

波多野右馬允義常と山内首藤滝口三郎経俊は、
呼びかけに応ずるどころか、暴言を吐く始末です」

というものでした。


石橋山古戦場


頼朝は、石橋山の戦いでは大敗してしまいますが、その後盛り返し、10月6日には鎌倉に入ります。

そして、10月20日、富士川で平家の追討軍を敗走させると、23日には、大庭景親をはじめとする石橋山の戦いの残党が頼朝に降服してきます。その中に経俊もいました。

頼朝は、経俊の山内荘を没収し、身柄を土肥実平に預けています。



~山内尼の頼朝への哀訴~


11月26日、頼朝は経俊を斬罪に処すよう命じます。

すると、経俊の母(山内尼)が、息子の命を救いたくて泣きながら頼朝のもとへ参上します。
(山内尼は、頼朝の乳母でもあります。)


そして、

「祖父の資通が八幡太郎義家様に仕えて以来、代々源氏に仕え忠勤を尽くしてきたことは、他の誰がこれに勝りましょうか。

父俊通は、平治の乱で討死し、六条河原に屍をさらしました。

子経俊が大庭景親に参じたことは、咎められても仕方のないことですが、これは平家への聞こえに配慮しただけことです。

石橋山に軍兵を送り込んだ武将は多くいますが、そのほとんどが罪をお許しいただいているのに、経俊は何故、父祖の勲功に免じてお許しいただけないのでしょうか」

と訴えたといいます。


それに対して頼朝は何も話さず、土肥実平に「預けておいた鎧を持参せよ」と命じます。

実平は、持参した櫃の中から鎧を取り出し、山内尼の前にそれを置きます。


そして頼朝は、

石橋山の戦いのときに、そちの子経俊が放った矢が鎧の袖に打ちこまれました。矢の口巻の上に「滝口三郎藤原経俊」と書きつけてあります。

この文字の切れ目から矢の本体を切って、鎧の袖に打ちこまれたままの状態で今日までとっておいたのです」

と話し、山内尼にそれを見せました。

山内尼は、それ以上何も申し立てることが出来ず、涙を拭いながら退出したそうです。


しかし、頼朝は、

山内尼の子を思う悲嘆に免じて、
また、先祖の源氏への功労に免じて、経俊の死刑を取り止めたといいます。



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